【キュアとケア】
 先日【道路の高齢化】で述べた重要な構造物の点検は、人間の体でいえば定期検診のようなもので、いわば5年に一度の定期検診を受けるように義務付けたということです。今までは病気にかかって症状が重くなってから医者(橋梁技術者)に見せて診断を仰ぎ、手術(修繕工事あるいは掛替)を受けさせていたのを、これからは定期健診で異常が発見されれば軽症のうちに治療(補修)しようというものです。これはいわばキュアの世界です。
 一方、人の体の場合、とりわけ乳幼児や高齢者などについては、身内の方が日頃から様子を見ており、何かいつもと違えば様子を見ながら薬を飲ませたり、医者に連れて行ったりしています。この子はいつも元気だけれど鼻水を垂らしたら要注意とか、いつも低血圧のお婆さんが今日はいつもより血圧が上がっているとか、個人個人の普段の状況と照らし合わせて判断していることも多いと思います。こうやって、日頃から状態を見て、いつもと違えばそれに合わせた処置をし、場合によっては医者を呼ぶ、これはケアの世界だと思うのです。
 橋やトンネルは残念ながら、自分の異常を誰かに伝えることができません。誰かが替わって日頃から様子を見て、異常があれば処置できる所に伝えてやる必要があるのです。この部分は従来、道路管理者が道路パトロールとして行っていますが、自治体によっては、現在、これに充当できる職員2名しかおらず、数か月かかってやっと一巡できているというところもあります。しかも職員や専門技術者は今後、定期点検や高齢化で増加する維持補修に忙殺されていくと予想されます。したがって、日常のケアについては、地域の人たちに手伝っていただけないかと思うのです。いや、本来ならば、その道は地域の人たちのもの、いつも使っている人たちに通りながら見ていただいて、橋の上の舗装が凹んできているとか、最近雨が降ると濁った水が側溝から溢れて路面を流れるようになったとか、いつもと違ってきていれば処置できるところに知らせる、それがケアなのではないかとも思います。
 そのケアの仕方を地域の方々に分かりやすくお伝えし相談に乗る、いわば保健師やケアマネージャーのような人を地域の中に育成していくことも急務なのではないかと考えています。