「まちは人。みちは暮らしの、出会い、語り合い。」
まちみち研では、その名の通り、「まち」と「みち」を軸に据え、
そこに住み、そこに暮らす人たちのコミュニティに想いを馳せ、
彼らの間で交わされるコミュニケーションを通して
地域を活性化するという究極の目標を描いている。

これを「まちづくり」という一言で括ってしまうと、問題の本質は見えない。

まちは、みちで結ばれている。
みちで区切られ、みちにはみ出し、みちを利用していて、
みちがなければ人もまちも孤立するしかない。
そんな「みち」が、今日の日本でどのような問題を抱えているのか。
どうすれば、地域住民にとってもっとreasonableな「みち」になるのか。
当研究室の取り組むべき課題は、「みち」についての研究である。

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私は、法律実務家であり、都市計画について深くコミットしてきた経歴を有しているわけではない。このような私にとっての当研究室での役割は、現状の実務を客観的に俯瞰し、あるvisionを実現するために現行の法律や政令等をどのように解釈すればよいのか、現行の法制度下では実現できないとすれば、どのような法改正や制定がなされる必要があるのか、といった観点から、研究室の考える方向性に法的な裏付けを行うことであると考えている。

たとえば、先日研究室で行われた、橋梁の長寿命化に関する研究会。 老朽化の現状の報告に引き続いて主に議論されたのは、維持修繕のためにどのような技術開発が行われているか、そのための費用はどのように手当てされているのか、といった方法論が中心であったという印象である。

道路の維持管理に関する規定は、道路法およびその関係法令に存在する。

(道路の維持又は修繕) 第四十二条  道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。 2  道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、政令で定める。 3  前項の技術的基準は、道路の修繕を効率的に行うための点検に関する基準を含むものでなければならない。

(道路の管理に関する費用負担の原則) 第四十九条  道路の管理に関する費用は、この法律及び公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法 並びに他の法律に特別の規定がある場合を除くほか、当該道路の道路管理者の負担とする。

道路法42条2項が技術的基準等を政令に委任しているので、道路法施行令を参照する。

(道路の維持又は修繕に関する技術的基準等) 第三十五条の二  法第四十二条第二項 の政令で定める道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、次のとおりとする。 一  道路の構造、交通状況又は維持若しくは修繕の状況、道路の存する地域の地形、地質又は気象の状況その他の状況(次号において「道路構造等」という。)を勘案して、適切な時期に、道路の巡視を行い、及び清掃、除草、除雪その他の道路の機能を維持するために必要な措置を講ずること。 二  道路の点検は、トンネル、橋その他の道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物について、道路構造等を勘案して、適切な時期に、目視その他適切な方法により行うこと。 三  前号の点検その他の方法により道路の損傷、腐食その他の劣化その他の異状があることを把握したときは、道路の効率的な維持及び修繕が図られるよう、必要な措置を講ずること。 2  前項に規定するもののほか、道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、国土交通省令で定める。

さて。施行令35条の2から、何らかの具体的な基準が読み取れるだろうか。 結局、細目は省令に再委任されており、当該省令は本稿の起案に際して発見することはできなかった。

この事実は、道路の維持管理に関する規律に関し、2つの問題の存在を示唆する。

ひとつは、いわゆる通達行政などとと呼ばれる慣習の問題である。

これまで法は、行政に関する概括的・一般的な規定を設けるにとどめ、それを解釈し政策に落とし込んで実行するのは全て官僚らの仕事とされてきた。 むろん、法改正には国会の関与が必要であり、オンデマンドに対応すべき政策課題がすべからく政治リスクに晒されるのは好ましくないともいえる。 しかしながら、道路インフラの老朽化が日本各地で急速に進行している中にあって、笹子トンネル事故の発生を防げなかった事実は、道路インフラの維持管理をもはや官僚主導の通達行政ではカバーし切れないことを白日の下に晒したと言わざるを得ない。

もうひとつは、道路法そのものの指向性である。 道路法は、昭和27年に制定された後、現在に至るまで、大きな改正が行われていない。 昭和27年といえば、前年に連合国との間でサンフランシスコ講和条約が締結され、日本がようやく主権を取り戻したばかりの時代。敗戦から立ち直り、国土をゼロから再び作り上げて行こうとしていた我が国が、インフラ整備のために整備したのがこの道路法であった。道路法は、「道路を作る」ための法律であるといっても過言ではない。 それから60年あまりが経ち、あまねく全国津々浦々までアスファルトがひき巡らされた今日の命題は、新しい道路を作り続けることにとどまらず、既存の道路を安全に供用し続けることにあることが明らかである。 そうすると、道路の維持管理のために、道路法とは根本的に理念の異なった新しい法律を制定する必要があるのではないだろうか。

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以上は、橋梁の長寿命化の議論を受けての私の考察である。 このほかにも、まちみちをめぐり、法と行政について考えるべき問題は決して少なくない。 私の専門性に照らし、この研究室において、かかる問題についての検討を重ねて行きたいと考えている。

(特任助教・弁護士 武知 俊輔)